大阪地方裁判所 平成8年(ワ)12895号 判決 1999年7月26日
甲事件原告
金澤明律こと金明律
被告
平本和人
ほか一名
乙事件原告
竹尾あけみ
被告
平本和人
ほか一名
丙事件原告
新山香織こと季香織
ほか一名
被告
金澤明律こと金明律
ほか三名
丁事件原告
金澤明律こと金明律
ほか一名
被告
新山香織こと季香織
ほか一名
主文
一 丙事件被告金明律は、丙事件原告李香織に対し、一六〇六万七三六七円及びこれに対する平成七年八月二五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 丙事件被告竹尾あけみは、丙事件原告李香織に対し、一六〇六万七三六七円及びこれに対する平成七年八月二五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
三 丙事件被告金明律は、丙事件原告玄涼香に対し、一六〇六万七三六七円及びこれに対する平成七年八月二五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
四 丙事件被告竹尾あけみは、丙事件原告玄涼香に対し、一六〇六万七三六七円及びこれに対する平成七年八月二五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
五 丙事件原告らの丙事件被告金明律及び同竹尾あけみに対するその余の請求並びに丙事件原告らの丙事件被告平本和人及び同平本和彦に対する請求、甲事件原告の甲事件被告らに対する請求、乙事件原告の乙事件被告らに対する請求、丁事件原告らの丁事件被告らに対する請求をいずれも棄却する。
六 訴訟費用は、甲・丁事件原告、丙事件被告金明律に生じた費用の三分の一を丙事件原告、丁事件被告李香織及び同玄涼香の負担とし、その余を甲・丁事件原告、丙事件被告金明律の負担とする。乙・丁事件原告、丙事件被告竹尾あけみに生じた費用の三分の一を丙事件原告、丁事件被告李香織及び同玄涼香の負担とし、その余を乙・丁事件原告、丙事件被告竹尾あけみの負担とする。丙事件原告、丁事件被告李香織に生じた費用の三分の一を金明律及び竹尾あけみの負担とし、その余を李香織の負担とする。丙事件原告、丁事件被告玄涼香に生じた費用の三分の一を甲・丁事件原告、丙事件被告金明律及び乙・丁事件原告、内事件被告竹尾あけみの負担とし、その余を玄涼香の負担とする。甲・乙・丙事件被告平本和人及び同平本和彦に生じた費用の三分の一を甲・丁事件原告、丙事件被告金明律及び乙・丁事件原告、丙事件被告竹尾あけみの負担とし、その余を丙事件原告、丁事件被告李香織及び同玄涼香の負担とする。
七 この判決は、第一項ないし第四項に限り、仮に執行することができる。
事実及び理由
第一請求
一 甲事件
甲事件被告らは、甲事件原告に対し、各自三八三二万六〇九六円及びこれに対する平成七年八月二五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 乙事件
乙事件被告らは、乙事件原告に対し、各自三六九五万三七一六円及びこれに対する平成七年八月二五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
三 丙事件
丙事件被告平本和人、同平本和彦及び同金明律は、丙事件原告李香織に対し、各自三五三二万四三四〇円及びこれに対する平成七年八月二五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
丙事件被告平本和人、同平本和彦及び同竹尾あけみは、丙事件原告李香織に対し、各自三五三二万四三四〇円及びこれに対する平成七年八月二五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
丙事件被告平本和人、同平本和彦及び同金明律は、丙事件原告玄涼香に対し、各自三五三二万四三四〇円及びこれに対する平成七年八月二五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
丙事件被告平本和人、同平本和彦及び同竹尾あけみは、丙事件原告玄涼香に対し、各自三五三二万四三四〇円及びこれに対する平成七年八月二五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
四 丁事件
丁事件被告らは、原告金明律に対し、各自二七〇三万五八三〇円及びこれに対する平成七年八月二五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
丁事件被告らは、原告竹尾あけみに対し、各自二五六六万三四五〇円及びこれに対する平成七年八月二五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
第二事案の概要
本件は、甲・乙・丙事件被告平本和人運転の普通乗用自動車(同平本和彦所有。以下「本件乗用車」という。)と金壽美(以下「壽美」という。)所有の原動機付自転車(以下「本件原付自転車」という。)が、交差点内で衝突し、本件原付自転車に乗車していた壽美及び玄相好(以下「相好」という。)が死亡した事故について、壽美の相続人らが、本件乗用車の運転者及び所有者に、不法行為及び自賠法三条に基づき、損害賠償請求する(甲事件及び乙事件)とともに、本件原付自転車の運転者が相好であったとして、相好の相続人らに対して、不法行為に基づき損害賠償請求し(丁事件)、一方、相好の相続人らも本件乗用車の運転者及び所有者に同様の損害賠償請求するとともに、本件原付自転車の運転手が壽美であったとして、壽美の相続人らに損害賠償請求した(丙事件)事案である。
一 争いのない事実等
(一) 当事者
甲・丁事件原告、丙事件被告金澤明律こと金明律(以下「明律」という。)は、壽美の父であり、乙・丁事件原告、丙事件被告竹尾あけみ(以下「あけみ」という。)は、壽美の母であった。
丙事件原告、丁事件被告新山香織こと李香織(以下「香織」という。)は、相好の妻であり、丙事件原告、丁事件被告新山涼香こと玄涼香(以下「涼香」という。)は、相好及び香織の長女であった。香織は、涼香の親権者である。
甲・乙・丙事件被告平本和彦(以下「和彦」という。)は、同和人(以下「和人」という。)の父である。
(二) 事故の発生
以下の事故(以下「本件事故」という。)が発生した。
日時 平成七年八月二五日午後三時三〇分頃
場所 大阪市生野区田島五丁目一番三〇号先路上(以下「本件交差点」という。)
事故車両一 本件乗用車(大阪七一す二三一六)
上記運転者 和人
上記所有者 和彦
事故車両二 本件原付自転車(大阪市東淀川と六三〇)
上記乗車人一 壽美(事故時年齢二二歳)
上記乗車人二 相好(事故時年齢二八歳)
(三) 本件交差点の形状
本件交差点は、南北道路(対向三車線)と東西道路がほぼ垂直に交わる交通整理の行われている交差点である。南北道路の制限速度は時速六〇キロメートルであった。
(四) 死因
壽美は、本件事故の約四時間後、胸腹腔内出血による出血性ショックにより死亡した(甲A九、乙一の一)。
相好は、本件事故後、間もなく脳挫傷により死亡した(乙一の二)。
二 争点
(一) 本件原付自転車の運転手
(明律・あけみの主張)
本件事故当時、本件原付自転車の運転手は、相好であった。
(和人・和彦、香織・涼香の主張)
本件事故当時、本件原付自転車の運転手は、壽美であった。
(二) 事故態様
(明律・あけみの主張)
本件原付自転車は、南から北へ走行し、本件交差点を東へ右折しようとしたのに対して、本件乗用車が北から南へ時速約九〇キロメートルで本件交差点へ直進入したため、本件交差点において、双方が衝突した。
(香織・涼香の主張)
本件乗用車が本件交差点を北から南へ走行していたところ、本件原付自転車が西から東へ走行したため、本件交差点において、双方が衝突した。
(和人・和彦の主張)
本件乗用車が対面信号青色に従い、時速約七〇キロメートルで本件交差点に進入したところ、本件原付自転車が対面信号赤色にもかかわらず、これを無視して本件交差点に進入したため、双方が衝突した。
(三) 責任及び過失割合等
(明律・あけみの主張)
和彦は、本件乗用車の所有者であり、同車の運行供用者であるから、本件事故につき、自賠法三条による責任がある。
本件事故は、和人が交差点に進入した際、右折進行中の本件原付自転車を確認することが可能であり、かつ衝突回避措置を執ることが可能であったのにもかかわらず、明らかに制限速度オーバー(時速約九〇キロメートル)の猛スピードで同交差点に漫然進入して、本件乗用車を本件原付自転車に衝突させたものであって、和人の過失は極めて重大であって、和人には民法七〇九条に基づく不法行為責任がある。
本件原付自転車を運転していた相好にも、本件事故を回避できなかったことについて過失責任を免れない。
(和人・和彦の主張)
本件事故は、専ら壽美の過失によるものであり、和人には何ら過失はない。本件乗用車に構造上の欠陥や機能上の障害はない。
仮に、和人に過失があるとしても、壽美、相好にも以下の過失があるから過失相殺されるべきである。
相好には、ヘルメットを装備していない過失がある。壽美、相好は二人乗りの危険運転をしていた。壽美は本件原付自転車を飲酒運転していた疑いが強く、相好は、そうした事情を知りながら、本件原付自転車に相乗りしていた。
(香織・涼香の主張)
和彦は、本件乗用車の所有者であり、同車の運行供用者である。
和人には本件交差点に進入するに際し、右方の確認を十分に行わなかった過失がある。
壽美には本件交差点に右折進入するに際し、対向車線を直進してくる車両の確認を十分に行わなかった過失がある。
(四) 損害
(明律・あけみの主張)
明律・あけみの損害は以下のとおりである。
<1> 壽美の損害は以下のとおりである。明律とあけみはそれぞれ二分の一の割合でこれを相続した。
ⅰ 慰謝料 一三〇〇万円
ⅱ 逸失利益
(和彦・和人に対する主張)
四三四八万八四三二円
(計算)
3,744,000×(1-0.5)×23.231=43,488,432
(香織・涼香に対する主張)
二〇九〇万七九〇〇円
(計算)
1,800,000×(1-0.5)×23.231=20,907,900
ⅲ 車両全損 一三万九〇〇〇円
ⅳ 腕時計損傷 一五〇万円
ⅴ 着衣損傷 六万円
ⅵ バッグ損傷 二〇万円
<2> 明律固有の損害 六三七万二三八〇円
ⅰ 慰謝料 五〇〇万円
ⅱ 治療費 一七万二三八〇円
ⅲ 葬儀費 一二〇万円
ⅳ 弁護士費用 二七六万円
<3> あけみ固有の損害
ⅰ 慰謝料 五〇〇万円
ⅱ 弁護士費用 二七六万円
(香織・涼香の主張)
相好の損害は以下のとおりである。香織と涼香は、それぞれ二分の一の割合でこれを相続した。
<1> 逸失利益 一億〇七三九万七三六〇円
(計算式)
7,200,000×(1-0.3)×21.309=107,397,360
<2> 葬儀費用 一二〇万円
<3> 慰謝料 二六〇〇万円
<4> 弁護士費用 六七〇万円
(五) 和解契約
(明律・あけみの主張)
明律と香織は、本件事故後、本件事故につき、互いに損害賠償請求をしない旨合意した。
第三争点に対する判断
一 争点(一)について
争いのない事実及び証拠(甲A一、五、八、乙一の三、四、香織本人)を総合すれば、以下の事実が認められる。
本件事故後、本件原付自転車を見分した結果、本件原付自転車前部に壽美の着衣の繊維等と思料される痕跡が集中し、同車後部に相好の着衣の繊維等と思料される痕跡が集中している事実が認められた。
本件事故後、本件乗用車を見分した結果、本件乗用車前部右側に相好のものと思料される衣服の繊維などの痕跡が集中し、同車前部左側に壽美の着衣の繊維等と思料される痕跡が集中している事実が認められた。
本件原付自転車は、壽美が所有するものであり、事故当時、壽美がアルバイトの通勤に使用していた。一方、相好は、事故当時、原付自転車を日常運転することはなかった。
以上の事実を総合すれば、本件事故時において、壽美が本件原付自転車を運転し、相好が後部に同乗していた事実が認められる。
壽美と相好の体格差、本件事故後の本件乗用車のフロントガラスの破損状況などは、上記認定事実と矛盾するものとは認められず、上記認定に反する報告書(甲A七)は採用できない。
したがって、相好が本件原付自転車を運転していたことを前提とする丁事件原告らの丁事件被告らに対する請求は、その余の点について判断するまでもなく、いずれも理由がない。
二 争点(二)について
証拠(甲A一、五、八乙一の一ないし四、証人杉原、和人本人)によれば、以下の事実が認められる。
(一) 和人は、本件乗用車を運転し、南北道路の第二車線を北から南に向けて時速約七〇キロメートルで走行し、本件交差点に差し掛かったが、前方の対面信号は青色表示であったため、そのまま本件交差点に進入した。
同じころ、壽美は、本件原付自転車を運転し、相好を後部に同乗させ、時速二〇キロメートル以上の速度で、東西道路を西から東に向けて走行し、本件交差点に差し掛り、前方の対面信号は赤色であったが、そのまま本件交差点に進入した。なお、その際、壽美、相好ともヘルメットを着用していなかった。他方、和人は、本件交差点に進入した直後、右前方一〇メートルくらいのところを進行してくる本件原付自転車に気づき、急ブレーキをかけたが間に合わず、交差点内において、本件乗用車と本件原付自転車とが衝突した。
(二) これに対して、明律・あけみは、本件原付自転車は、南北道路の南から本件交差点に進入し、交差点内を右折進行していたと主張し、同様の見解を示す報告書等(甲A二、六、一五)が存在する。しかし、本件原付自転車が南北道路を北進していたのであれば、同様に南北道路を北進していたトラック運転手(竹下幸一郎)がそれを目撃するはずであるにもかかわらず、トラック運転手は、事故直後の実況見分において、本件原付自転車は本件交差点内を西から東に向けて走行しているところしか目撃していないと説明していることが認められる(乙一の三)。また、本件乗用車の約一五メートル後方を走行していた車両の運転手である杉本克彦も、本件原付自転車が交差点ほぼ中央付近を西から東に向けて走行しているのを目撃した旨供述している(証人杉本)。さらに、和人自身が、本件原付自転車を衝突直前まで気づかなかった旨、本件事故直後から一貫して供述しており(乙一の三、和人本人)、和人に前方不注視があったとしても、本件道路状況等からすれば、本件原付自転車が交差点を右折したものであるのに、和人が本件原付自転車を衝突直前まで気づかなかったとするのは不自然といえる。以上のとおり、事故を目撃した三人の供述は、事故直後から一致しており、その信用性は高いというべきである。また、本件原付自転車の損傷状況についても、本件原付自転車には、衝突後に道路等との衝突による損傷もあることを考慮すれば、本件原付自転車の損傷状況により、本件原付自転車が右折中であったと認めることはできない。したがって、上記報告書等は、いずれも上記認定を覆すに足りるものとはいえない。
また、壽美及び相好の事故直前の行動も上記認定を覆すに足りるものとはいえない。確かに、甲A八号証によれば、本件原付自転車は本件交差点の南側にある交差点の角に位置する日建ビル一階の入口付近に駐車されており、本件事故直前も、壽美は、相好を後部に乗せて、日建ビル一階から本件原付の運転を始めたこと、また、相好はその所有の乗用車を、本件交差点東側に位置する駐車場に停めていたことが窺われる。そして、上記日建ビルから上記駐車場まで最短で行くためには、本件交差点を北進から右折する進路をとることになる。しかし、相好は、単に帰宅するだけならば、上記駐車場までタクシーに乗車することも考えられたにもかかわらず、わざわざ壽美と一緒に日建ビルで降車したことを考慮すれば、二人は、日建ビル前で降車した後寄り道したことも十分考えられる。したがって、日建ビルと上記駐車場と本件交差点の位置関係は、前記認定を覆すに足りるものではない。
三 争点(三)について
以上認定の事実からすれば、壽美は、前方の信号表示が赤色であったにもかかわらず、本件交差点に進入したのであり、青信号に従って南北道路を進行してくる車があること、そして、その車と衝突することが容易に予測できたというべきであり、壽美には、赤信号にもかかわらず本件交差点に進入したという重大な注意義務違反がある。
これに対して、和人は、青信号に従って進行していたのであるから、対面信号が赤信号であるにもかかわらず、右方から上記認定の速度で交差点に進入する車両があることまで注意して進行する義務まではないというべきである。また、和人は、制限速度が時速六〇キロメートルの道路を時速約七〇キロメートルで進行していたものであるが、制限速度を守っていたとしても本件事故は避けられなかったと認められる。したがって、和人には、本件事故を導く注意義務違反は認められず、和人が本件事故に関し、不法行為責任を負うとは認められない。
また、以上の和人の無過失の事実のほか、本件乗用車に構造上の欠陥や機能上の障害はなかったと認められる(乙一の三)から、和彦は、本件事故に関し、運行供用者責任を免責される。
したがって、甲事件原告の甲事件被告らに対する請求、乙事件原告の乙事件被告らに対する請求並びに丙事件原告らの丙事件被告和人及び和彦に対する請求は、その余の点について判断するまでもなく、いずれも理由がない。
一方、相好は、本件原付自転車に二人で乗ることが危険であることを認識し、又は認識し得たにもかかわらず、壽美運転の本件原付自転車の後部に自ら同乗したものといえるところ、この二人乗り運転は、壽美の注視能力を低下させ、結果回避措置を遅らせるなど、本件事故の一因となっているといえる。また、相好の死因は脳挫傷であるところ、相好は事故当時ヘルメットを着用していなかったのであるから、ヘルメットの不着用が本件事故による損害を拡大させたといえる。
以上の相好の過失のほか、相好が帰宅のため、その所有に係る乗用車を駐車している場所まで送り届けてもらう目的もあって、壽美の好意で本件原付自転車に同乗させてもらったことが窺われることなどの諸般の事情を考慮すれば、相好関係の損害に関し、相好に三割の過失を認めて過失相殺するのが相当である。
四 争点(四)について
相好死亡による損害は、以下のとおり(合計八七六九万七八一五円)である。
(一) 逸失利益 五七三二万七八一五円
相好の最終学歴は中卒と認められること(香織本人)等、弁論に現れた一切の事情を考慮すれば、相好は、事故当時、年収三八四万三三〇〇円(平成七年賃金センサス産業計・企業規模計・小新中卒男子)を有したことが認められる。
この点、香織・涼香は、相好の年収が七二〇万円を下回らないと主張するが、これを認めるに足りる証拠はない。
相好には、扶養すべき妻と子があったことを考慮すれば、生活費控除率は三〇パーセントとするのが相当である。
相好は、六七歳までの三九年間就労可能であったといえる。
そこで、新ホフマン式計算法(新ホフマン係数二一・三〇九)により、年五分の割合による中間利息を控除して、相好の死亡による逸失利益を算出すると、以下の計算式のとおり五七三二万七八一五円となる。
(計算式)
3,843,300×(1-0.3)×21.309=57,327,815(一円未満切捨て)
(二) 葬儀費用 一二〇万円
相好の年齢、生前の生活状況、収入など本件に現れた一切の事情を考慮すると、上記金額を社会通念上相当と認める。
(三) 死亡慰謝料 合計 二五〇〇万円
前記認定の本件事故の態様、相好の年齢、相好の家族関係、相好の生前の生活状況、その他本件に現れた一切の事情を考慮すると、上記金額をもって相当と認める。
(四) 弁護士費用 五八〇万円
本件事案の内容、難易、本件事案の審理の経過、認容額、その他本件に現れた一切の事情を考慮すれば、上記金額が相当である。
五 争点(五)について
明律・あけみ主張の明律と香織が本件事故につき互いに損害賠償請求をしない旨の合意をしたと認めるに足りる証拠はない。
六 結論
丙事件被告明律及び同あけみが丙事件原告らに支払うべき合計金額は、上記損害のうち、逸失利益、葬儀費用及び慰謝料の合計額から過失相殺分を除いた額に、弁護士費用を加えたものであって、その額は、以下の計算式のとおり六四二六万九四七一円となる。
(計算式)
(57,327,815+1,200,000+25,000,000)×(1-0.3)+5,800,000=64,269,471
香織と涼香は、相好の死亡により、上記債権をそれぞれ二分の一の割合で相続し、明律とあけみは、壽美の死亡により、上記債務をそれぞれ二分の一の割合で相続したから、明律が香織に支払うべき額、涼香に支払うべき額、あけみが香織に支払うべき額、涼香に支払うべき額は、以下の計算式のとおり、それぞれ、一六〇六万七三六七円となる。
(計算式)
64,269,471×1/2×1/2=16,067,367
よって、主文のとおり判決する。
(裁判官 中路義彦 山口浩司 下馬場直志)